文字では腹は膨れない

でも栄養にはなるのです

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積まれた積み木は崩れやすい

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今週のお題「部活動」

いろんなテーマで書く練習ということで、可能な限り今週のお題にも便乗していこうと思います。

 

今では考えられないが、中学生の頃、私は野球部に所属していた。

私は基本的に、外で遊ぶよりもゲームが好きなインドア少年だった。

しかし、小学校高学年の時に参加した町内のソフトボール大会で優勝するという分かりやすい成功体験の影響もあり、

中学に進むと同時に、一緒にソフトボールをやっていた仲良し素人メンバーで一緒に野球部に入部した。

 

 

元々運動が得意ではなかった私だったが、気の合う仲間たちと一緒に体を動かすのは単純に楽しかった。

 

フライは取れなかったし、バントも苦手だった。

走塁も遅かったし、バッティングもパッとしなかった。

朝練の時間は早かったし、走り込みもきつかった。

 

きついこと、苦しいことは多々あったが、仲間と一緒ならそれも楽しかった。

そして何より、顧問を信頼していた。

甲子園に出場したこともある、若い男性教師で、クラスの担任でもあった。

私の苦手ないわゆる熱血系のノリだったが、信頼の置けるいい先生だった。

 

そんな環境でしごかれながらも野球を続けていたのだが、

ある時から部の雰囲気が変わりはじめた。

自分たちが2年生になり、3年生が引退したころ。

つまり、自分たちの代が部内の最上級生になったころ。

上からの抑えがなくなり、タガが外れたのだろうか。

悪さが横行するようになった。

 

万引きをしたり、学校の備品を壊したり。

いろいろなことをしていた。

野球部なんてどんな漫画でも柄が悪く描かれるものだし、

初めの頃は私も見て見ぬ振り、というか、ああ、こんな人たちもいるよな、

というテンションで彼らを見ていた。

のだが、それが続くと心情としてそうもいかなくなった。

 

経験がある人もいるかも知れないが、部員のうちの誰かが何かしらの問題行為を起こすと、

連帯責任ということで、部全体で掃除をさせられるなどの奉仕活動に取り組まなければならなかった。

それが何度も、何度も続く。

さすがにアホらしくなり耐えられなくなってきていた。

 

しかも、そういった行為を行うのは決まってレギュラー陣だった。

私たちのような小学校まで素人だったメンバーとは違い、幼い頃から野球に取り組んできているメンバーで、実力には雲泥の差があった。

確かに実力には差があったのだが、人として許されない行為を行なっている彼らが、

試合に出続けているという状況が尚更耐えられなかった。

自分は出れなくてもいいが、私の横でいつも頑張っている親友たちが、

そんなやつらのせいで試合に出れないのは辛かった。

 

そんな状況が続く中、顧問は言った。

「次に万引きやそれに順ずる行為を行なったものは、誰であろうと退部にする」

と。

やっと言ってくれたか、と心の底からそう思ったのを覚えている。

 

それから少しして、中学校である事件が起きた。

被服室、という家庭科などの授業を行う教室で、

10数台あったミシンのコードが全て切断されていたのだ。

言い方は悪いが、家庭科担当の教師が学年全体から嫌われてしまっていたということもあり、

犯人が誰なのか、学校側も、生徒側もいまいち把握しきれていなかった。

 

しかし、本当に残念なことに、その主犯格は我が部のエースだった。

昼休みの自主練の時間、彼は共犯の仲間たちと楽しげにその話で盛り上がっていた。

 

本当に残念だった。

彼らの心情が理解できなかった。

彼らには悪いが、退部してもらおう。

 

そうして私は、聞いた話を顧問に伝えた。

伝えたのだが、顧問はエースを許した。

今まで通り、奉仕活動だけで済ませてしまった。

 

「退部にする」

そう言っていた私の信頼する顧問はそこにはいなかった。

エースという勝利のために必要なピースと、私からの信頼を天秤にかけ、

エースを取ったのだ。

 

そこからは早かった。

一瞬にして顧問に対する信頼が崩れ去った私は、すぐに部活に顔を出さなくなった。

そうして退部した。

 

信頼というものは本当に脆い。

積み重ねるのは大変なのに、崩れるのは一瞬だ。

そう、まさに積み木のように、土台からきっちり積み重ねていかなければならないのだが、

何か衝撃が走ると、足場が一本倒れると、それだけで一気に崩れ去ってしまう。

 

それを身をもって体感した。

 

その当時は、かなり精神的にやられていたが、

今振り返ってみると、あの体験から信頼というものの脆さを知っておくことができたのは大きな意味があったと思う。

あの一件から、信頼の積み木を崩さないようにするためにはどうすれば良いか、

と常々考えるようになった。

 

そのお陰か、

高校の部活では部長、

大学ではバイトのリーダーやゼミのリーダー、

社会人になってからは採用担当、

というような信頼が必要になる立場につかせてもらうことが出来た。

 

ミシンを切ってくれてありがとう、というつもりは毛頭ないが、

あの経験には感謝をしたい。

 

〇〇大臣が失言をして失墜、

俳優の〇〇が浮気をして失墜、

いろんなニュースが流れているように、

日常のいろんなところに積み木を崩す要因は転がっているものである。

いかに崩さず積み重ねていくことができるか。

 

 

高さ比べでは負けないように、積み重ねていきたい。

 

レゴブロックのように、噛み合わせたら外れない、崩れないようなものなら、

どれだけ楽だっただろうか。